【イベント紹介】セルジュ・ラトゥーシュ研究者の中野佳裕さん(立命館大学)をお呼びして「低炭素経済」を考える学習会「今、必要なのは『緑の成長』か?『脱成長』か?」(12月23日、京都)

ジュビリー関西ネットワークも協賛しているイベントのご案内です。

◎この学習会のチラシです。ダウンロードして周りの方にお知らせいただければと思います。
ATTAC京都12月例会チラシ.doc 直


(以下、転送・転載大歓迎!)

ATTAC京都 12月例会
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

シリーズ企画「低炭素経済」を考える1
グリーン・ニューディールと「緑の成長」で地球の危機を救えるのか?−

「今、必要なのは『緑の成長』か?『脱成長』か?」
報告者:中野佳裕さん(社会思想、開発学/立命館大学

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

(写真:フランスの経済哲学者で「脱成長論」を唱えるセルジュ・ラトゥーシュ氏)

●日時:2010年12月23日(木・休日)午後2時〜5時


●場所:喫茶店ほんやら洞」2階スペース(今出川通寺町西入ル)
http://honyarado-kyoto.cool.ne.jp/
地下鉄烏丸線 今出川駅下車→徒歩 約5分
京阪電鉄 出町柳駅下車→徒歩 約5分






(内容)

●プロローグ:「『貧困の終焉?』グローバル経済の収奪構造をえぐるドキュメンタリー」を上映(セルジュ・ラトゥーシュも登場)

「先進国の人々がいまの生活水準を保つために途上国の人々をどんどん貧困に追い込むのだと、監督は言います。この構造を変えるための提唱が、先進国の「脱成長」です。これはどんな考え方なのでしょうか」(映画説明より)
http://d.hatena.ne.jp/Jubilee_Kansai/20100512/1273676578


●第1部「『脱成長論』とは何か?−セルジュ・ラトゥーシュの議論から−」

●第2部「今、必要なのは『緑の成長』か?『脱成長』か?」

 報告者:中野佳裕さん(社会思想、開発学/立命館大学
(講師プロフィール)
 1977年、山口県生まれ。早稲田大卒。英サセックス大学開発学博士課程修了。開発学博士。専攻は国際開発論、平和学、社会政治哲学。
 フランスの経済学者・哲学者・思想家セルジュ・ラトゥーシュの「脱成長論」を日本に紹介。 セルジュ・ラトゥーシュ『経済成長なき社会発展は可能か?〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』(作品社、2010年7月)の訳者。同書で日本語版解説「セルジュ・ラトゥーシュの思想圏について」を執筆。
(作品社HPより/セルジュ・ラトゥーシュ著/中野佳裕訳『経済成長なき社会発展は可能か?〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』)
http://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/shakai/tanpin/22971.htm

 最近、「〈脱成長〉とはどういう理論なのか?」(『kotoba』第2号「特集・「脱成長」の経済を生きる。新しい資本主義か、ポスト資本主義か」集英社、2010年12月)を執筆。
集英社HPより/集英社クォータリー『コトバ kotoba』第2号〔2011年冬号〕「特集・「脱成長」の経済を生きる。」本書にはラトゥーシュ自身による今年7月の日仏会館、龍谷大学明治学院大学での3回の来日講演をまとめた講演録「セルジュ・ラトゥーシュ〈脱成長〉を語る」所収、訳は中野佳裕
http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/

 第1部と第2部の間に「『緑の成長』とは何か?」(五十嵐守さん)という例会参加者側からの報告が入ります。1部・2部とも中野さんの報告の後で質疑応答の時間を設けます。例会後、中野さんを囲んでの交流会も予定しています。

●参加費不要(各自、飲食物をご注文下さい。資料代カンパをお願いします)

●主催・お問い合わせ先:ATTAC京都(どなたでもご自由に参加できますが、資料準備の都合上、事前に参加申し込みについてご連絡いただけますとありがたいです)
ATTAC京都HP http://kattac.talktank.net/
ATTAC京都ブログ http://kattac.talktank.net/blog/
E-mailアドレス Kyoto@attac.jp
●協賛:ジュビリー関西ネットワーク、市民社会フォーラム

●なお来年1月には、シリーズ企画「低炭素経済」を考える第2弾として諸富徹/浅岡美恵『低炭素経済への道』(岩波新書)の合評会を予定しています。それ以後も著者である諸富徹さん(京都大学経済学部)本人をお呼びしての環境税排出権取引、緑の成長と低炭素経済・低炭素社会についてのシンポジウムなど計画中です。
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1004/sin_k527.html



(参考記事:『京都新聞』2010年11月19日付、中野佳裕「『脱成長』の社会へ 『幸福』は分かち合いから」より一部抜粋)

「最新の報告書(2009年)によれば、HPI(ハッピー・プラネット・インデックス、国民の幸福度指標:引用者註)」の上位にはコスタリカドミニカ共和国、ジャマイカ等の中南米諸国が並び、先進国であるフランス、英国、日本はそれぞれ71、74、75番目に位置づけられる。米国に至っては114番目である。

 犠牲の上に成立

 OECD諸国のHPIの平均は、1960から70年の間に20%ほど低下しており、他方で同時期のエコロジカル・フットプリントは60%も増加している。以来、この差は拡大傾向にある。さらに、これらの諸国では70年代以降、GDP成長率に対してHPIが反比例に推移していることも示されている。先進国は物質的には豊かであるものの、その豊かさは国民の生活実感に対応するものではない、ということである。失業・ストレス・自殺・から公害・途上国資源の独占・二酸化炭素排出まで、先進諸国の経済成長は、社会生活と自然環境の多大な犠牲の上に成立しているのである」

               (中略)
 社会関係を優先

 フランスのセルジュ・ラトゥーシュは、このような先進諸国の生活様式の矛盾を早くから指摘していた経済哲学者である。〈脱成長〉というスローガンのもと、経済成長のためではなく、社会関係の質の成熟のために経済や政治が役立てられることを主張している。

 〈脱成長〉の中心価値は『分かち合い』である。個人消費の充足ではなく、『みんなの幸せ』を考えることから始まる新しい社会、それが〈脱成長〉社会である。商品関係よりも、友情・助け合い・共感といった社会関係を優先させる社会を創ること。そのためには、隣近所の人々が関わり合い、足下にある社会問題について共に取り組み、生活の場を充実させることが課題となる。また、エネルギー消費を大胆に削減し、自然環境への負荷を削減するとともに、地方を都市から自立させることも大切である。つまり、社会問題と環境問題の解決という視点を、地域社会の自立と結びつけることが重要である。そのためには、より少なく生産・消費するが、多様な社会関係あふれる地域社会へと移行することが鍵となる。たとえば、自然農法などの、生態系にやさしい生産活動を通じて地産地消の仕組みを導入する。街ぐるみで介護やケアを行う環境を整える。地域社会に貢献する金融サービスを発達させる。ワークシェアリング完全雇用を実現し、文化的で市民的な活動時間を増やしていくなど」

(参考記事2:『朝日新聞』2010年7月13日付、セルジュ・ラトゥーシュへのインタビュー)

「経済の成長は人を幸せにしない 経済哲学者・ラトゥーシュ氏に聞く」
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201007130317.html

 「脱成長」を掲げて経済発展や開発のあり方を問い続ける仏の経済哲学者セルジュ・ラトゥーシュ氏(70)が、日仏会館の招きで来日した。初の邦訳書『経済成長なき社会発展は可能か?』(作品社)が今月刊行されたラトゥーシュ氏に、あるべき経済政策などについて聞いた。

■地域社会の自立こそ必要

 同書は欧州を中心に広く読まれており、日本での出版は13カ国目になる。「脱成長(デクロワサンス)」は、「だんだん弱く」を意味する音楽用語「デクレッシェンド」と同じ語源をもつ。経済の規模を徐々に縮小させ、本当に必要な消費にとどめることが真の豊かさにつながると氏は説く。

 「私が成長に反対するのは、いくら経済が成長しても人々を幸せにしないからだ。成長のための成長が目的化され、無駄な消費が強いられている。そのような成長は、それが続く限り、汚染やストレスを増やすだけだ」

 資源や環境の問題が深刻化する中で、「持続可能な成長」という考え方が国際的に広く受け入れられるようになった。だがラトゥーシュ氏は、「持続可能な成長」は語義矛盾だと指摘する。「地球が有限である以上、無限に成長を持続させることは生態学的に不可能だからだ」

 世界経済が長期不況にあえぎ、日本でも貧困問題が深刻化しはじめた。経済成長こそが貧困を解決するという経済学の「常識」が力を得ていく中、「脱成長」は旗色が良くないようにも見える。

 この点に関してはラトゥーシュ氏も、今の社会システムのままでマイナス成長に転じても事態はかえって悪化するだけだ、と認める。

 「より本質的な解決策は、グローバル経済から離脱して地域社会の自立を導くことだ。『脱成長』は、成長への信仰にとらわれている社会を根本的に変えていくための、一つのスローガンだ」

 物質的な豊かさを達成した「北」の国々だけでなく、「南」の貧しい国も成長を拒否すべきなのだろうか。

 「北の国々による従来の開発は、南の国々に低発展の状態を強いたうえ、地域の文化や生態系を破壊してきた。そのような進め方による成長ではなく、南の人々自身がオリジナルの道を作っていけるようにしなければならない」

 就任間もない菅直人首相は、経済成長と財政再建は両立できると訴えている。だがラトゥーシュ氏は、「欧州の政治家も同じようなことを言っているが、誰も成功していない」と批判する。

 「彼らは資本主義に成長を、緊縮財政で人々に節約を求めるが、本来それは逆であるべきだ。資本主義はもっと節約をすべきだし、人々はもっと豊かに生きられる。我々の目指すのは、つましい、しかし幸福な社会だ」(樋口大二)


(「脱成長論」についての参考サイト)
●ブログ「さて何処へ行かう風が吹く 」(tessai-ekaiさんによる「脱成長論」についての情報や考察が満載のサイトです)
http://blogs.yahoo.co.jp/tessai2005
「民主主義的でエコロジカルな自律社会――〈脱成長〉社会――構築のために」
http://blogs.yahoo.co.jp/tessai2005/63435491.html